ア行(浅田次郎 他)読書ノート@あ行@ sa-ku-ra*
乙川優三郎 『生きる』 【内容】 亡き藩主への忠誠を示す「追腹」を禁じられ、懊悩の年月を 生きる初老の武士。人の世に生きる切なさを格調高く描く、 感動の中篇集 (amazonより) 久々に、読後、涙してしまいました。 恩ある藩主の後を追って殉死することを家老に止められ、 そのことを誰にも話せず、一人悶々と世の批判を浴びながら 生きながらえる武士の苦悩には身につまされます。 周囲の誤解を甘んじて自分ひとりの身に受け、中傷や家族 友人からの軽蔑すら受けながら、生きながらえねばならない 苦しさ。 ただ一人、支えてくれた妻も病のはてに先立ち、一人残され 、自分を理解してくれる者が一人もいない孤独感。 もろもろの理不尽さの中で、ひたすら耐えるだけの年月の重み は、読んでるだけで胸押しつぶされそうでした。 これだけで終われば、なんとも重苦しい作品になってしまった ところでしょうが、最後に明かされる、一つの光・・・ 苦い味を口いっぱいに味わったあとに、一滴垂らされた 清涼な水のような読後感でした。 乙川さんの作品は、コレが初読です。 一見、藤沢周平氏の作品に似た雰囲気もありますが、乙川さんの 作品から立ちのぼる「心の揺らぎ」のようなものが、私には とても好ましく感じます。 藤沢作品は、すばらしく端正な作品が多いのですが、私にとっては あまりにも「整いすぎてる」と感じて、いまひとつ惹きつける ものが弱いんです。 ま、これは、あくまでも私個人の好みの問題ですので・・・ 藤沢ファンの方、ごめんなさいm(_ _)m ==================================== 「さざなみ情話」 【内容】 遊女ちせを身請けするために、ひたすら仕事に打ち込む船頭の修次。 社会の底辺にありながら、けっして希望を捨てずにけなげに生き抜く 人々の姿を静謐な筆致で描く長篇時代小説。(「BOOK」データベースより) 江戸の世を生きる人々を、淡々と静謐に描き出す彼の作品には 、とても魅了されます が・・・・・・今作品は、少々、気持ちが引いてしまいました。 底辺で生きる二人を実に丁寧な筆致で描いてるんですが、あまりにも その苦難の様子がくどいまでに描かれてて、正直読んでるだけで 暗~~~い気持ちになってしまいます(-"-) 閉塞した状況を耐え忍ぶ2人の姿を、ここまでとことん描く粘り強さ には感心しますが、読んでるほうまで心塞がれてしまって、ページを 繰るのが苦痛なほどです。 でも、最後に救いある結末を持ってきたのは、さすがに乙川さん! ただし、この結末だと、2人の「その後」は明暗両方にとれるような 気もしますけど^^; ーーーーーーーーーーーーーーーーー 「5年の梅」 各作品をとおして再生をテーマにしているせいか、とても温かい目線を 感じて、読後感よかったです♪ Designed By チワワン子
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